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大阪高等裁判所 昭和53年(ネ)461号 判決

昭和五三年(ネ)第四六一号事件控訴人

第四八一号事件被控訴人

松野ミネ

第一六六五号事件当審反訴被告(第一審原告)

昭和五三年(ネ)第四六一号被控訴人

第四八一号控訴人

堀内実

第一六六五号当審反訴原告(もと第一審被告木村俊一の引受参加人)

昭和五三年(ネ)第四六一号被控訴人(第一審被告)

東和建設株式会社

主文

1  第一審原告の本件控訴を棄却する。

2  第一審参加人の本件控訴を棄却する。

3  第一審原告は、松原市上田七丁目一九三番宅地一八八・四二平方メートルのうち別紙図面(ハ)、(ニ)、(ホ)、(ヌ)、(ハ)の各点を順次直線で結んだ範囲の土地一一・九〇平方メートルを分筆のうえ、松原市上田五丁目一四番二〇号松野末吉に対し、所有権移転登記手続をせよ。

4  当審における訴訟費用のうち、第一審原告及び第一審被告の支出した分は第一審原告の負担とし、第一審参加人の支出した分は三分しその一を第一審参加人の、その余を第一審原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求める裁判

一  第一審原告

1  昭和五三年(ネ)第四六一号事件

(一) 原判決を次のとおり変更する。

(二) 第一審原告所有の松原市上田七丁目一九三番宅地一八八・四二平方メートルと、第一審参加人所有の同市上田七丁目一九一番三宅地五〇・七六平方メートルとの境界は、原判決別紙図面(イ)、(ヘ)の両点を直線で結ぶ線であることを確定する。

(三) 第一審原告と第一審参加人及び第一審被告との間で、原判決別紙図面(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)、(ホ)、(ヘ)、(イ)の各点を順次直線で結んだ範囲の土地は、第一審原告の所有であることを確認する。

(四) 第一審参加人は第一審原告に対し、原判決別紙目録記載の建物を収去して前項記載の土地を明渡せ。

(五) 第一審被告は第一審原告に対し、昭和四八年八月一六日から同年一〇月二一日まで一か月九〇〇〇円の割合による金員を支払え。

(六) 第一審参加人は第一審原告に対し、昭和四八年一〇月二二日から第四項の明渡済みまで一か月九〇〇〇円の割合による金員を支払え。

(七) 訴訟費用は第一、二審とも第一審参加人及び第一審被告の負担とする。

(八) 右第(四)ないし(六)項につき仮執行宣言。

2  昭和五三年(ネ)第四八一号事件

(一) 第一審参加人の控訴を棄却する。

(二) 控訴費用は第一審参加人の負担とする。

3  昭和五三年(ネ)第一六六五号

(一) 第一審参加人の反訴請求を棄却する。

(二) 反訴の訴訟費用は第一審参加人の負担とする。

二  第一審参加人

1  昭和五三年(ネ)第四六一号

(一) 第一審原告の本件控訴を棄却する。

(二) 控訴費用は第一審原告の負担とする。

2  昭和五三年(ネ)第四八一号

(一) 原判決中第一審原告勝訴部分を取消す。

(二) 第一審原告の請求を棄却する。

(三) 訴訟費用は第一、二審とも第一審原告の負担とする。

3  昭和五三年(ネ)第一六六五号(当審での予備的反訴)

(一) 第一審原告は、松原市上田七丁目一九三番宅地一八八・四二平方メートルのうち別紙図面(ハ)、(ニ)、(ホ)、(ヌ)、(ハ)の各点を順次直線で結んだ範囲の土地一一・九〇平方メートルを分筆のうえ、松原市上田五丁目一四番二〇号松野末吉に対し、所有権移転登記手続をせよ。

(二) 反訴の訴訟費用は第一審原告の負担とする。

三  第一審被告

1  昭和五三年(ネ)第四六一号

(一) 第一審原告の本件控訴を棄却する。

(二) 控訴費用は第一審原告の負担とする。

第二  当事者の主張

次に付加、訂正するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

一  第一審参加人の反訴請求原因

1  松野末吉は昭和二三年一〇月二日以降、別紙図面(ハ)、(ニ)、(ホ)、(ヌ)、(ハ)の各点を順次直線で結んだ範囲の土地一一・九〇平方メートル(以下本件反訴土地という)を、その所有の一九一番三の土地の一部を信じて占有して来たが、その信ずるについて過失がなかつたから、昭和三三年一〇月二日その所有権を時効により取得した。

2  仮に右1の事実が認められないとしても、松野末吉は、昭和三二年五月二〇日又は三一日以降、本件反訴土地を、自己所有地として占有して来たが、そう信ずるについて過失がなかつたから、昭和四二年五月二〇日又は三一日その所有権を時効で取得した。

3  松野末吉は昭和四七年一二月二〇日脱退被告木村俊一に対し本件反訴土地を一九一番三の土地と共に売渡し、同人は昭和四八年一〇月一日第一審参加人にこれを売渡した。

4  一九三番の土地は松野逸治の所有として登記されているが、同人は昭和二〇年六月二五日死亡し、第一審原告が家督相続をした。

5  第一審参加人は脱退被告に対し、脱退被告は松野末吉に対し、松野末吉は第一審原告に対し、右売買又は取得時効にもとづき、本件反訴土地につき所有権移転登記請求権を有するところ、松野末吉及び脱退被告はこれを行使しない。

6  よつて、仮に本件反訴土地が一九三番の土地に属すると認定されたときは、第一審参加人は脱退被告及び松野末吉に代位して、右時効を援用し、第一審原告に対し、本件反訴土地につき分筆のうえ、松野末吉への所有権移転登記手続を求める。

二  反訴請求原因に対する第一審原告の認否と主張

1  反訴請求原因1、2は否認する。仮に、松野末吉が本件反訴土地の一部を占有していたとしても、それは所有の意思に基づくものではなく、少なくとも悪意又は過失がある。

2  反訴請求原因3は争い、同4は認める。

三  第一審原告の主張

1  松野末吉に対する売渡は実測のうえでされたものであるから、売渡土地の実面積は公簿面積(七二・一一坪)と一致している筈である。原判決別紙図面(イ)、(ヘ)線の南側の一九一番三の土地は二三九・〇三平方メートル(七二・一三坪)あるから、この線が一九三番の土地との境界であることは明らかである。

2  松野末吉が一九一番三の土地の売渡を受けたのは昭和三二年五月三一日であることは同年になつて測量がされていることにより明らかである。したがつて、同人が仮に本件係争地を占有していたとしても所有の意思による占有は右同日以前にはありえない。

3  本件係争地は昭和四五年までその大部分を第一審原告が農作物の干場等として利用して来た。松野末吉は本件係争地を占有したことはなく、これが第一審原告の所有であることを認めていた。

4  第一審被告は本件訴状送達翌日の昭和四八年八月一六日から同年一〇月二一日まで、第一審参加人は同月二二日から現在まで第一審原告所有の本件係争地上に原判決別紙目録記載の建物を所有して右土地を占有することにより第一審原告に対し一か月九〇〇〇円の割合による損害を与えている。

5  よつて、第一審原告は、(一)第一審参加人に対し一九三番の土地と一九一番の土地との境界が(イ)、(ヘ)線であることの確定、(二)第一審参加人及び第一審被告に対し本件係争地が第一審原告の所有であることの確認、(三)第一審参加人に対し土地所有権にもとづき建物収去土地明渡、(四)第一審被告及び参加人に対し本件係争地の不法占拠による損害金の支払を求める。

四  第一審参加人、第一審被告の主張

1  松野末吉に対する売渡に際し売渡令書などに記載された面積は、藤本亀蔵の届出に基づいたものであつて実面積を正確に反映したものではない。

2  第一審原告とその前主は、原判決別紙図面(ロ)、(ハ)、(ニ)、(ホ)を結んだ線上に塀を作つてその南側に存する本件係争地との境界を画して来た。この塀は土塀、板塀、ブロツク塀と変つて来たが、その位置は変つていない。

松野末吉は一九一番三の土地上に建物を所有し、その北側に出入口、雨戸を設け、本件係争地に樹木を植えてこれを庭として使用占有して来た。

3  時効についての主張の補充

仮に本件境界が第一審原告主張のとおりであるとしても、松野末吉は昭和三二年五月二〇日又は三一日以降、本件係争地を自己所有地として占有して来たが、その信ずるについて過失がなかつたから、昭和四二年五月二〇日又は三一日その所有権を時効で取得した。右時効を本訴において援用する。

第三  証拠(省略)

理由

一  当裁判所も、一九三番の土地と一九一番三の土地との境界は、原判決別紙図面の(ロ)、(ハ)、(ヌ)の各点を直線で結んだ線であると判断するが、その理由は次に付加、訂正するほか、原判決理由一、二項に説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決一三枚目裏九行目の「乙第二一号証」の次に「、甲一四、一五号証、当審証人上野昭二、松田博治、松野弘子(各一部)、松野和夫の各証言」と加える。

2  原判決一四枚目表六行目の「昭和二三年一〇月二日」を削る。

3  原判決一六枚目裏三行目から一七枚目裏一行目までの全文を次のとおり改める。

「(四) 大阪法務局堺支局の公図では、一九一番の土地の北には東部分に一九三番の土地が、西部分に一九二番の土地が隣接して存し、一九三番の土地と一九一番の土地との境界線は段差なく直線をなしているが、一九三番の土地の南側の境界線は一九二番の土地の南側の境界線よりもなお南側にあるためこの両境界線を結ぶと一直線にはならず鉤状になり、一九一番の土地の北東部分に一九三番の土地が食込むように図示されている。他方、一九二番の土地の所有者と一九一番の土地の所有者との間では右両土地の境界線は原判決別紙図面(ニ)、(ホ)を結んだ線を西に延長した直線上にあることについて争いがない。

(五) 原判決別紙図面(イ)、(ヘ)の両点を直線で結んだ線は、松野末吉が一九一番三の土地上に所有していた建物の雨落ち線、すなわち右建物の軒先きの線を垂直に地上に延長した線にほぼ該当する。しかし右線の付近には、過去においても高低差、境界標、塀など境界を意味すると解しうるようなものは何も存在しなかつたし、この線をはさんだ両側を比較してもその利用状況はこの線の南側が右建物に近く、軒下となつていた点を除くと相違がなかつた。

(六) 松野末吉の右建物の北側には、その東寄りに巾約〇・九メートルの勝手口があつてその台所から本件係争地に出ることができたし、その西寄りには巾約三・六メートルに亘り雨戸があつて右建物の室内から本件係争地を眺めたり、出入することもできた。松野末吉は本件係争地に昭和二〇年ころ松ほかの樹木を数本植えたが、昭和四五年にはその高さは二メートル余、その枝は原判決別紙図面の(イ)、(ヘ)線、(ニ)、(ホ)線にまで達する大きいものに育つていた。松野末吉やその家族は昭和二〇年頃以降右樹木を植栽するとともに、本件係争地のうち右樹木の植えられていない部分に草花を植えたり物を置いたりして係争地を占有使用していた。第一審原告やその家族は松野末吉の右のような本件係争地使用に対して異議を述べたことはなかつた。第一審原告又はその家族が昭和二〇年以降に本件係争地を大工の作業場として用いたことはないし、本件係争地を農作物の干場として用いたこともなかつた。

(七) 第一審原告、その前主である松野逸治、松野徳松は、戦前より、一九三番の土地上に建物を所有しそこに居住し、原判決別紙図面(ロ)、(ハ)、(ニ)、(ホ)の各点を順次結んだ線上に高さ約二メートルの板塀(一部は土塀)を設置していた。もつとも、同図面の(ニ)点より西側約〇・六メートルの巾については塀がなく、松野末吉方又は第一審原告方の者が互の家を訪れるときはこの部分から本件係争地を通つて前記勝手口に至つていた。本件係争地付近の状況は右のようであつたから、一般の人がこれを見たとき、右の塀の線が第一審原告の家の敷地の南端であり、本件係争地は松野末吉の家の裏庭と解される状況にあつた。

(八) 第一審原告は昭和四五年に右の塀を撤去して同じ位置、すなわち原判決別紙図面(ロ)、(ハ)、(ニ)、(ホ)を順次直線で結んだ線上にブロツク製の塀を構築した。この際に、従前存した(ニ)点付近の出入口の部分にも塀を構築したので一九三番の土地の南側から本件係争地に出入することができなくなつた。このブロツク塀構築に際し、第一審原告はその塀の南側に一九三番の土地が存することを松野末吉に告げてその権利を留保したり、そのことを明らかにするため格別の措置をとつたことはなかつた。

以上の本件係争地の状況は松野末吉が一九一番三の土地を売却した昭和四七年一二月まで続いていた。」

4  当審における証拠調の結果によつても引用部分の事実認定(右1ないし3に訂正後のもの)を覆すに足りない。

第一審原告は、昭和四五年まで本件係争地の大部分を農作物の干場として利用して来たと主張し、当審証人上野昭二、松田博治、松野弘子、松野十四男(第一回)の証言や、右証言と弁論の全趣旨により成立の認められる甲一七号証の一、二、五ないし八の供述記載の中には右主張に添う部分がある。しかし、右主張とその証拠申出は当審で始めてされたものであること、本件係争地のすぐ南には松野末吉の家があり、本件係争地には木が数本あつたことは前記認定のとおりであるから、日蔭となつて農作物を干すのに適切な場所とは思えないこと、本件係争地の第一審原告居宅側には塀があることなどを考慮し、証人松野末吉、松野和夫(当審)の証言とも対比すると、前記証言、書証記載は信用することができず、他に第一審原告の右主張を認めるに足る証拠は存しない。

5  第一審原告は松野末吉に売渡された土地が実測面積七二・一一坪であつたことを理由に、一九三番の土地と一九一番三の土地との境界が原判決別紙図面(イ)、(ヘ)線であると主張するが、松原町農業委員会が売渡土地の地積を七二・一一坪として処理したのは、松野末吉の申請書の記載によつたものであつて実際の面積の調査をしなかつたものであり、売渡登記のための分筆図も地形、地積が不正確であることは前記引用部分認定のとおりであるから、右主張は前提を欠くし、公簿面積と実測面積との相違は引用部分認定の諸事情をも考慮すると、本件境界線が(ロ)、(ヌ)線であるとの判断を動かすものではない。他に本件境界線が右以外の線であると判断させるに足る事実は本件全証拠によつても認めることはできない。

二  右一に判断のとおり原判決別紙図面(ハ)、(ニ)、(ホ)、(ヌ)、(ハ)の各点を順次直線で結んだ範囲の土地、即ち本件反訴土地は一九三番の土地に属することになるから、次に第一審参加人、第一審被告の取得時効の主張について判断する。

前記認定の事実によれば、松野末吉は少なくとも昭和二〇年より昭和四七年一二月まで本件反訴土地を占有して来たこととなる。

成立に争いのない甲二号証、証人松野末吉、松野和夫(原審第一回)の証言によれば、松野末吉は本件反訴土地が大正年間以降藤本亀蔵より賃借していた一九一番三の土地(当時は一九一番一の土地)の一部に属すると信じて占有していたことが認められるから、松野末吉の本件反訴土地の占有は、右賃借当時は賃借の意思によるものであるが、右証拠によれば、一九一番三の土地が前記引用部分認定のように同人に売渡された時点以降は、同人は賃借土地全部を自己に売渡しを受けたものと信じ本件反訴土地も自己所有になつたものと考えて占有を続けたものであることが認められるので、右占有は所有の意思によるものとなつたというべきである。そこで右売渡時期について検討すると、前記甲二号証、成立に争いのない甲五号証の一、四、六によれば、松原町農業委員会は一九一番三の土地につき売渡の期日を昭和二三年一〇月二日、売渡の相手方を松野末吉とする売渡計画を定めたこと、右土地については右同日付売渡を原因とする所有権移転登記がされたことが認められるが、昭和二三年当時は農地委員会は存在したが、農業委員会は昭和二六年法律第八八号農業委員会法が昭和二六年一〇月一日に施行されるまでは存在しなかつたこと、右甲二号証によればもとの一九一番一の土地から一九一番三の土地が分筆されたのは昭和三二年五月二三日、右売渡を原因とする所有権移転登記がされたのは同月三一日であることが認められることからすると、右売渡の令書が松野末吉へ交付されたのは昭和三二年五月二〇日頃と推認される。したがつて、松野末吉の本件反訴土地についての所有の意思による占有は昭和三二年五月二〇日以降ということになる。第一審原告は松野末吉が本件係争地が第一審原告の所有であつたことを認めていたと主張するが、本件全証拠によつてもこれを認めることができないし、他に松野末吉の占有が所有の意思に基づかないものと認めるに足る証拠はない。

第一審原告は松野末吉の自主占有には過失があると主張する。しかし、原判決別紙図面(ロ)、(ハ)、(ニ)、(ホ)の線上には戦前より塀があり、松野末吉は昭和二〇年ころより本件反訴土地を含む本件係争地に木を植えるなどして利用して来たのに、すぐ隣に居住する一九三番の土地の所有者の第一審原告からは何の異議の申出もなかつた等の前記認定事実によれば、公図における境界線の形状等を考慮してもなお、松野末吉がその自主占有の始めにおいて本件反訴土地が自己に売渡しを受けてその所有となつた一九一番三の土地に属すると信じたことに過失はないというべきである。

そうすると、本件反訴土地については昭和三二年五月二〇日より一〇年間を経過した昭和四二年五月二〇日に時効が完成し、松野末吉がその所有権を取得し、第一審原告はその所有権を失つたことになる。

そして、本件係争土地のうち本件反訴土地以外の部分が第一審参加人所有の一九一番三の土地に属することは前記判断のとおりであるから、第一審原告の本件係争地の所有権確認、建物収去土地明渡、損害賠償の請求はいずれも理由がない。

三  第一審参加人の予備的反訴について判断する。

松野末吉が昭和三二年五月二〇日に遡つて本件反訴土地所有権を時効により取得したことは前記二に判断のとおりである。

反訴請求原因3のとおり、本件反訴土地も松野末吉から、脱退被告、第一審参加人へと順次売渡されたことは、原審証人松野和夫の証言(一、二回)により成立の認められる乙六号証、一八号証、証人吉川忠重の証言により成立の認められる乙一七号証、証人松野末吉の証言、第一審参加人本人尋問の結果、及び原審での検証の結果により認められ、この認定を覆すに足る証拠はない。

反訴請求原因4の事実は当事者間に争いがない。

右事実によれば、松野末吉は第一審原告に対し、脱退被告は松野末吉に対し、第一審参加人は脱退被告に対し、本件反訴土地につき、右取得時効又は売買を原因とする所有権移転登記手続を請求することができる。ところが、松野末吉や脱退被告がそのような請求をしていないことは弁論の全趣旨により明らかであるから、第一審参加人は脱退被告及び松野末吉に代位して第一審原告に対し、本件反訴土地につき分筆のうえ、松野末吉に右取得時効を原因とする所有権移転登記手続を求めることができることになる。よつて第一審参加人の第一審原告に対する予備的反訴請求は理由がある。

四  そうすると、一九三番の土地と一九一番三の土地との境界を原判決別紙図面(ロ)、(ヌ)点を直線で結んだ線と確定し、その余の第一審原告の請求を棄却した原判決は正当であつて、第一審原告と第一審参加人の控訴はいずれも理由がないからこれらを棄却し、第一審参加人の当審での反訴請求は理由があるからこれを認容することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条を適用して主文のとおり判決する。

別紙図面

〈省略〉

(ロ)193番南東角の点

(ハ)(ロ)点からブロツク塀が西に至り北側に直角に折れ曲つている地点

(ニ)(ハ)点からブロツク塀が北に至り更に西方に直角に折れ曲つている地点

(ホ)193番南側ブロツク塀と191-3と西側の191-4との境界線を北側に延長した線との交点

(ヌ)191-3と191-4との境界線と(ロ)(ハ)線を延長した線分との交点

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